歴代興行収入ランキングでもかなりの上位に食い込んでいる新海誠監督の大作「すずめの戸締り」。
今回は、本作に登場した心に残る名言たちをくまなく拾い上げてきました。
本作の感動の余韻をもう少し堪能したい方はぜひ見ていってくださいね。
映画「すずめの戸締り」に出てきた名言まとめ

「お前は、邪魔。」

「すずめ、やさしい、すき。お前は、邪魔。」
ダイジン初登場シーンより
このセリフは名言とは若干異なるかもしれませんが、本作の中でストーリー展開の軸となる重要な場面でのセリフです。
草太の手当て中の鈴芽の部屋に突如現れた痩せた野良猫。鈴芽はその子にご飯を与えました。(おそらく煮干し?)
餌を食べ終えた猫は先程より少し肉付きがよくなり身なりも綺麗に。そして上記のセリフを放った途端、草太は呪いをかけられることとなりました。
「..寝てたのか…?」

「やっと起きた…!草太さん全然起きないから全部夢だったんじゃないかって思い始めてました!」
「..寝てたのか…?」
鈴芽と草太の会話シーン
フェリーで夜を明かし、朝になると草太の寝相の悪さに驚いた鈴芽。その後も中々起きない草太に呆れる鈴芽でしたが、この場面は草太の存在自体がこの世から離れ始めていたことの暗喩でした。
草太の返答的にも「(この俺がそんなに深く)寝てたのか..?」といったニュアンスに聞こえなくも無いのは、おそらく本人も深く眠っていたことに驚いているから。
この辺りにも伏線が張られていたことに気がついたのは私も二度目の鑑賞後です。
「ここで暮らしていた人々のことを思え!鍵穴が開く!」
「鈴芽さん!君が鍵をかけろ!目を閉じ、ここで暮らしていた人々のことを思え!鍵穴が開く!」
「目を閉じて、ここにあったはずの沢山の感情。それを思って声を聞くんだ!」
草太が鈴芽に後ろ戸を閉じさせるシーン
このセリフからも、後ろ戸を封じるためにはそこに暮らしていたり存在していた人々の正(ポジティブ)の感情を思い浮かべることで鍵穴が開き、閉じることができる、と。
後ろ戸は廃墟となってしまったことで(負のエネルギーの入り込んでしまった)不安定な空間に発生するとされています。
これに関しては呪術廻戦の呪霊発生条件と似ている様な気がしました。
「大事なことしよるような気がするんよ。」

「今日は鈴芽のおかげで久しぶりに行ったわあの場所。うちの通ってた中学校、あの場所にあったんよ。何年か前の土砂崩れで集落ごと捨てられてしもうたけど。なあ鈴芽。あないな泥だらけになってあそこで何しとったん?その椅子はなんなん?なあ、あんたって何もん?」
「鈴芽は魔法使いやけんなぁ、秘密ばっかや。でもなんでやろな、あんたはなんか、大事なことしよるような気がするんよ。」
千果とのお泊まりシーン
千果のセリフからも「後ろ戸」の発生条件に更なる仮説が立てられますね。
恐らく、後ろ戸はただの廃墟ではなく「天災や人災(戦争とかも含む)」によって負のエネルギーを多く残しながら廃れてしまったエリアに発生しやすいのではないか、というもの。
元々廃墟になる前の土地は神様からいただいたかけがえの無いもので、それが廃墟になり負のエネルギーを沢山取り込んだ。
その不安定な空間が災いを招き、後ろ戸が開く。恐らくこういった流れです。
要するに、その土地を神様に正式に還すことで災いを納めるのが閉じ師の仕事と言うことになるでしょう。
「君には常世が見えるんだ!」
「常世だ!君には常世が見えるんだ!この世界の裏側、ミミズのすみか、全ての時間が同時にある場所。常世は死者のおもむく場所なんだそうだ。現世に生きるおれたちには届かない場所。行ってはいけない場所なんだ」
観覧車での草太のセリフ
本作のキーとなる「常世」の存在を示した重要なセリフ。ちなみに私たちの生きている世界は「現世(うつしよ)」と呼ばれます。
「大事な仕事は、人からは見えない方がいいんだ。」
「大事な仕事は、人からは見えない方がいいんだ。さっさと元の姿に戻って、閉じ師も教師も両方やるよ。」
草太
スナック「はぁばぁ」で寝泊まりしている場面で草太が鈴芽に話したセリフです。
個人的にはこのセリフにも、新海誠監督のメッセージが含まれている様な感覚がありました。
閉じ師だけに限らず、世の中「人からは見えにくいが大切な仕事」はめちゃくちゃ多いです。
特に震災に関連した話だと、福島原発に従事していた作業員は事故後の廃炉作業に参加しており、私たち一般人の目にはあまり触れないところで”命をかけて人々を守る大事な仕事”を強いられました。
もしかすると、こういった廃炉作業に関わった作業員を「閉じ師」と結びつけて描いていた可能性もあるのかもしれません。
さりげないセリフでしたが、本作の主たるメッセージにもなり得る重要なセリフだと思います。
「光が消える。声が消える。体が消える。」
「でも俺はもしかしたら、もう、すでに。遠ざかっていく。光が消える。 声が消える。 身体が消える。 こころが消える。寒い。寒い。寒い。寒い。」
草太
このセリフの前にスナック「はぁばぁ」で休んでいた草太の椅子は前のめりに倒れてしまいます。
おそらく椅子が倒れる描写は、単純な物理的な不安定さの現れでも草太が寝落ちした描写でもなく、草太が本格的に呪いに取り憑かれ、「人間」から「物質としての椅子」になりつつある状況を表したものでした。
「生きるか死ぬかなんて、ただの運なんだって小さい頃からずっと思ってきた。」

「怖くなんかありません。生きるか死ぬかなんて、ただの運なんだって小さい頃からずっと思ってきた。でも、草太さんの居ない世界が私は怖いです!!」
鈴芽
鈴芽のこのセリフには「幼い頃に震災を経験した辛い過去」を明確に感じさせます。
大好きだった母親は(おそらく津波の影響で)あっけなく死んでいなくなりました。
幼い鈴芽はこの出来事を「運だった」と、思い込むことで震災による理不尽さをなんとか噛み砕いて乗り越えていたのかもしれません。
そのため、本作前半部分の鈴芽は命を投げ出すことを恐れず無茶をするシーンが多いです。
これには「死んでしまったとしてもそれは仕方ない」と強く信じていないとできないことです。
何気ないセリフですが、幼い鈴芽の心に残された傷を感じさせるセリフだと思います。
「もう私、しんどいわ..。」

「もう私、しんどいわ..。鈴芽を引き取らんといかんようになって、もう10年もあんたの為に尽くして、馬鹿みたいよ、私。どうしたって気遣うとよ、母親を亡くした子供なんて。あんたが居たからウチに人も呼べんかったし、コブ付きじゃ婚活だってうまくいかんかったし、こげな人生お姉ちゃんのお金があったって全然割があわん!!」
「そんなの覚えちょらん!あんた、ウチから出てってよ!あたしの人生返してよ!!」
環(たまき)
「全然、それだけやないとよ。」
「あんね、駐車場で私が言ったこと、胸ん中で思っちょったことあるよ。でも、それだけやないと。全然、それだけやないとよ。」
環(たまき)
環が鈴芽に対して抱いていたネガティブな感情を「実は思っていたこともあった」と素直に吐露した部分は、いい意味で意外でしたが人間味のある演出で個人的にいいなと思いました。
そりゃ善意で迎え入れたとはいえ、楽しいことや良いことばかりではなかったのは当然のこと。映画を見ただけでは想像し尽くせない苦労が環にもあったはずです。
しかし本音を打ち明けたことで、二人の間の絆はより深まった様な気もします。
そんな二人の間で交わされた重要なシーンでのセリフがこちらでした。
「好きな人のところ!!」
「環さん!わたし行ってくる!」
「え、どこに?」
「好きな人のところ!!」
鈴芽と環の会話シーン
鈴芽は震災直後に迷い込んだ常世への入り口となる扉を見つけ、遂に常世へ足を踏み入れました。
「もっと生きたい!生きていたい!死ぬのが怖い。」
「あぁこれで、これで終わりか。こんなところで…!でも、おれは君に会えたから、君に会えたのに!消えたくない、もっと生きたい!生きていたい!死ぬのが怖い。生きたい、生きたい、生きたい、もっと…。」
「私だってそうだよ!!もっと、もっと生きたい。声を聞きたい。ひとりは怖い。死ぬのは怖いよ。草太さん。」
草太と鈴芽の会話シーン
「鈴芽の手で、元に戻して..?」
「ダイジンはね、鈴芽の子にはなれなかった…。鈴芽の手で、元に戻して..?」
ダイジン
「神の本質」どおり気まぐれに動いていた様に見えたダイジンは、ただ鈴芽がすきで一緒にいたかっただけの様でした。
鈴芽の子になれないことがわかった時点で、ダイジンは要石に戻る方が鈴芽のためになると思ったのかもしれません。
可愛いキャラスタートで登場して、途中敵キャラかと思わせながら最後は可愛くていい奴だったという大どんでん返しには多くの人が騙されたはずです。

ちなみにAmazonでダイジンの可愛いマグカップあったので載せておきます


「私はね、鈴芽の、明日。」
「なんて言えばいいのかな。あのね、鈴芽、今はどんなに悲しくてもね、鈴芽はこの先、ちゃんと大きくなるの。だから心配しないで。未来なんて怖くない!あなたはこれからも誰かを大好きになるし、あなたを大好きになってくれる誰かとも沢山出会う。いまは真っ暗闇に思えるかもしれないけど、いつか必ず朝が来る。あなたは光の中で大人になっていく!必ずそうなるの。それはちゃんと決まっていることなの。」
「お姉ちゃん、だれ?」
「私はね、鈴芽の、明日。」
鈴芽と鈴芽の会話シーン
「行ってきます!」
「私忘れてた。大事なものはずっと前に、もう全部もらってたんだ。行ってきます!」
鈴芽
ここで言う「大事なもの」とはなんなのか。
おそらくですが、それは「光」のことを指しているんじゃないかなと思っています。
鈴芽は母親を失い、真っ暗闇に堕ちた様に感じていたはず。そりゃ4歳の女の子ですから「母親=世界の全て」です。
しかし、その幼い鈴芽に対して未来の鈴芽は「光に包まれた未来」の存在を約束します。
そして、本作のラストシーンは、鈴芽が草太に向けて発した「おかえり」で幕を閉じました。
おかえりを言えずに亡くなってしまった母親(鈴芽にとっての光)を失ってしまったが、草太自身が鈴芽のいまの光として、戻ってきたことを印象づけたラストシーンでした。