人気サブスクリプションサービス「Netflix」内において、最近話題になっている作品があります。
それが今回取り上げさせていただいている作品「西部戦線異状なし」です。
本作は、エーリヒ・マリア・レマルク作(1929年)の長編小説が原作となっており、翌年1930年には映画化もされた作品としても有名です。
今回はNetflix限定のリメイク版「西部戦線異状なし」を鑑賞した感想や考察をいくつかまとめたものを記事にしました。
ちなみに原作の小説、映画は以下になります。
小説版
映画版

小説版は世界的な大ベストセラーとなり、映画の方は第3回アカデミー賞最優秀作品賞を受賞するなど、その功績も華々しいです。
「ウクライナ侵攻」の影響から世界情勢が非常に不安定な今、決して他人事には思えない「戦争」の実態をリアルに描いた本作は、現代の若者にこそ見て頂きたい作品の一つと言えるでしょう。
「西部戦線異状なし(1930)」は人気サブスクリプションでも視聴可能
ちなみに1930年版の本作なら人気サブスクリプション「U-NEXT」でも視聴が可能です。
2,189円の月額料金で気になる映画も見放題です。他にも沢山映画を見たい方には非常におすすめです。
あらすじ
舞台は第一次世界大戦の末期、ヨーロッパ。
「祖国の英雄」になるべく、兵隊は志願したパウル、クロップ、ルートヴィヒ、ミュラーの4人は希望を胸に抱き戦場(西部戦線)へ足を踏み入れました。
しかし実際の戦場は想像とは全く異なりただただ悲惨で厳しいものでした。
そして次々と死んでいく仲間を前に、戦争の無意味さを痛感する主人公のパウルでしたが、戦場に赴いてしまった以上、彼には戦う以外の選択肢はなかったのでした。
本作の感想
本作の特徴として挙げられるのは、戦争の凄惨さを描いている場面以外にもその「リアル」な描写が特徴的かつ印象的な作品と言えるでしょう。
- 遺体の山に兵隊がよじ登り、衣服・ブーツなどの回収作業を進めるシーン
- 回収した(血のついた)衣服が洗われ、破れた部分は裁縫され若き新兵たちの元は渡されていくシーン
- 塹壕に溜まった雨水をヘルメットで掻き出すシーン
- 地元農家の家に忍び込み、ガチョウを盗み食すシーン
- 敵の塹壕に攻め込んだ場面、一掃した後に置いてあった食糧をここぞとばかりに食すシーン
などなど、細かい物まであげていくと正直キリがないですが、上記のシーンは特にリアルさを描く意味では印象的でした。

自分が戦場にいるかのような没入感を感じられたのも、これらのリアルな描写の影響かもしれませんね。
そして何より、良くも悪くもグロテスクな表現も惜しみなく描かれていました。
恋人や家族との鑑賞するにはすこし重たすぎる映画だと思いました。

終わり方も救いようのないバッドエンド過ぎますしね。
また、戦争映画として有名な「プライベートライアン」でも見られたように本作でも
敵味方関係なく、兵士を1人の人間として描かれていました。
戦場に置かれれば誰しもが生き残るためには相手をころしていかなくてはなりません。
しかしどんな兵士にだって、故郷や家族はいて、その死を悲しむ人間が必ずいることを忘れてはならないでしょう。

本心は戦いたくない、ころし合いたくない兵士たちがどうしようもなく戦わざるを得ない戦場の残酷さと戦争の無意味さをわかりやすく表している作品とも言えるでしょう。
本作の考察ポイント
本作を鑑賞して、個人的に気になった考察ポイントをいくつかまとめました。
棺桶にかけていた「白い粉」は何?
本作冒頭のシーン(ハインリヒが戦死した直後の場面)において、ドイツ軍の遺体が収容されていたと思われる大量の棺桶に謎の白い粉を片付けていた兵士がかけているシーンがありましたね。
個人的にあの粉は何だったのか気になったので調べてみました。
推測として挙がったのが「消石灰」と言うものです。
消石灰とは、
主に水酸化カルシウムのことを指し、生石灰に水をかけるとできる白色の粉末を表した名称です。消毒用以外にも肥料目的や、モルタルの原料として使用されてきました。
これらのことから、消石灰を棺桶にかけていたのは、「遺体と腐敗防止や消毒目的」があったものと考えられます。
プロイセンってなに?
作中でチャーデンの口から「プロイセン」という言葉が出てきたシーンがありました。
「プロイセン」とは、1700年から1947年までの間に栄えた王国の一つでした。地理的には現在のドイツ北部からポーランド西部にかけて領土としておりました。※首都はベルリン。
チャーデンの故郷がプロイセンだったのかは明らかにはされていませんが、「戦争が終わったら」の問いにすぐ出てくるほどの地名だけあり、チャーデンにとって大切な思い出だったのかもしれませんね。
ミュラーが女性陣に声かけをした後、一同が少し落ち込んでいた理由とは?
パウル一同が盗んだガチョウを食べ終わったシーンで地元住民と思われる女性にクロップが声をかけるシーンがありましたが、初めは笑っていた一同の表情が次第に曇っていった場面がありましたね。

初見だとこのシーンの意味が少し分からなかったので考察しました。
おそらく、一同が初め笑っていたのにそのうち笑顔がなくなり、神妙な面持ちになったのは、「そのうちみんな死んでしまう」ことを確信していたからかもしれません。
「一つ問題があるな。お前は下士官にはなれない。」
このセリフからも、「生きて帰ることは絶対にできない」「自分が死ぬまで戦争が終わることは絶対にない」と言ったことを、皆が心のどこかで確信していたのだろうと言うことが読み取れます。
フランス軍の「戦車」の名前は?
本作の中でも一際恐怖を駆り立てるシーンとして、「フランス軍の戦車が突撃してくる場面」がありましたね。

めちゃくちゃ強力な戦車登場による絶望感は、下手なホラー映画なんかよりも余程怖かったですよね。
調べてみた所、あの戦車はフランス軍の「サンシャモン」呼ばれる車名の戦車で、別名「突撃戦車」とも呼ばれていたフランスで開発された初期の戦車です。

ただ、その車体の長さが欠点でもあったとされ、ひどいオフロードや小さい壕を越えるだけでも車体が引っかかり、身動きが取れなくなってしまったという機動力の低さが課題として嘆かれてもいました。
とはいえ、一般的な野戦砲を車体前部に搭載している上に、最大4挺の機関銃を車体の周囲に搭載することができたこの兵器は、当時のドイツ軍の脅威となったことは間違えないでしょう。
まとめ
冒頭でも書きましたが最近の世界情勢を見ていると、こういった「戦時下に置かれた人々の姿」が決して他人事には思えないところがまた恐ろしいですよね。
しかしそんな時代に直面した今だからこそ「戦争の愚かさや無意味さ」をリアルに描いた本作のような映画はもっと世に広がるべきだし、多くの方に鑑賞していただきたい作品の一つでしょう。
「戦争は何で起こしてはいけないものなのか」といった根本的な疑問に対する答えを良くも悪くも見出してくれる、そんな映画だと私は思います。
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