「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」は2011年公開のアメリカのヒューマンドラマ映画。
9・11で父を亡くした家族の喪失と再生を描いた作品であるが、映画評論家や一般の視聴者からの評価は賛否両論なのもこの作品の特徴の一つです。
今回は、「本作の題名の由来」を含めた考察記事になります。
内容にはネタバレも含みます。まだ本作をご覧になっていない方は是非無料トライアルにて鑑賞の上での参照をおすすめします。
「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」映画内容のあらすじ
本作は9・11テロで大好きだった父親を亡くした少年オスカーを取り巻く親子・家族愛を描いた超大作です。
父親を亡くしてからしばらくしたある日、オスカーはクローゼットで1本の鍵を見つけます。
そんな父親が残したメッセージを探すため、オスカーは闇雲にニューヨークの街へ飛び出していきます。
様々な人々との出会いを通して、最愛の者を失った人々の再生と希望を描き出していきます。
【ものすごくうるさくて、ありえないほど近い】何故父親トーマスは何度も「居るのか?」と問いかけたのか
「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」題名の由来とは
この映画は、観る前も観た後もその題名の由来が気になる方が多いのではないでしょうか。
映画タイトルの由来には主人公であるオスカー・シェル(俳優:トーマス・ホーン)が抱えている生まれつきの病気が起因していると言っても過言ではないでしょう。
オスカー・シェルが抱えていた「アスペルガー症候群」とは?
アスペルガー症候群は、自閉症と同じ特徴を持っていますが知的障害や言語発達に遅れを伴うことが無いのが最大の特徴です。
また症状の中の一つには「社会的コミュニケーションの障害」というものがありますが、俗にいう空気の読めない発言をしてしまったり場や年齢にそぐわない発言をしてしまうことを指しています。
作中でのオスカーのセリフを聞いていても、言い回しや言葉遣いが良くも悪くも独特なのはその影響からです。
映画タイトルの由来は、主人公自らが考え出した揶揄言葉?
映画ラストのシーンで、第6回調査探検の結果をまとめたレポートを母親のリンダが発見しますが、このレポートの表題が映画タイトルでもある「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」でしたね。
この由来に関しては様々な憶測があるようですが、個人的には意味は二通りあるかな?と感じています。
1つはオスカーのトラウマとなっていた街の騒音、そして探していた鍵穴の正体について揶揄した言葉。
そして2つ目は母親の愛情を揶揄した言葉という説です。
- (街の騒音や雑踏が)ものすごくうるさくて、(鍵穴のありかは)ものすごく近い
- (オスカーへの愛情や優しが)ものすごくうるさくて、(心の距離や繋がりが)ありえないほど近い
原題「extremely loud & incredibly close」では違った見方も?
原題と邦題では少し、捉え方が異なることもあるのが洋画の面白さの一つですが、この映画でも少し違う捉え方ができます。
先述したように邦題では、どちらかと言うと母親の愛にややフォーカスを当てているように感じられますが、原題の中にある「loud」と「close」にはそれぞれ色々な意味合いが込められているのです。
- loud→うるさい、騒々しい、執拗な
- close→閉ざす、閉まる、近い、親密な、終わらせる、完了させる
上の表を見ていただくと、後者closeには広い意味合いが含まれている事がわかります。
原題は父親に向けた「矛盾語」
作中では何度か、オスカーとトーマスの間で繰り広げられた矛盾語対決のシーンが取り上げられていました。
オスカーにとってお父さんとの思い出ともなっている大切な場面です。
原題は訳し方によっては、
「ものすごくうるさくて、あり得ないほど閉ざされている」とも捉えられ、まさに息子オスカーが父親の死後、ずっと悩まされていたオスカーの後悔の念が込められています。
父の死後、オスカーは「父の残した謎の鍵」の正体を探るべく、街中を奔走しました。何人もの「ブラックさん」を訪ね回りますが、鍵の正体は中々掴めない日々が続きます。
そんなオスカーの脳内では、「父親からの留守電の内容」や「生前の父の言葉の数々」が後悔の念とともにこだましていて「うるさかった」のかもしれません。
なのに鍵の正体については勿論教えてくれることは無く、「父親の口は閉ざされて」いました。
息子の病気を理解し、息子の為に父親が考えたのが「調査探検遊び」
父親のトーマス・シェルは、息子の病気を少しでも良くできればと色々と考えていたのでしょう。父親の立場から考えても、大切な息子が生まれつき病気を患っていれば罪悪感や申し訳なさ、様々な感情が生まれるかもしれません。
そこで父トーマスが考えたのが「幻と化した6つ目の行政区を探す調査探検」という名目で息子が少しでも社交的になれるように仕向けたのでした。
父親の優しさも相まってか、息子オスカー・シェル自身もお父さんとの好きだった遊びと劇中にて語っていました。
第6回調査探検を終えて様々なものを乗り越えたオスカー

映画ラストのシーンは主人公オスカーが、父親の死と多くの苦手としていたものを乗り越えたことを表していたのでしょう。
特に、「第6回調査探検」をまとめたレポートの締めくくりページとして貿易センタービルから落ちていくのではなく下から飛び込んでいく様子を切り絵とイラストで自ら表現しているシーンではそれが感じられます。
まとめ
「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」は結論、いい意味で独特な映画です。
そのためか、世間の声としては
「主人公オスカーの言葉遣いが独特すぎてそれが気になって内容に入り込めなかった」
「お母さんのネタバラシの仕方が気に入らなかった」
など、賛否両論がかなり分かれているようです。
とはいえ個人的には普通に感動できた映画でしたし、変に粗探しなどせずに観れば楽しめる映画だと感じました。
どんな映画にだって、多少なりとも粗は存在してます。せっかく映画を観るなら粗を探すのではなく細やかな演出や伏線を探して楽しむ方が楽しめます。
「また観てみたい!」と素直に感じた方は是非見直し鑑賞してみてくださいね。
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